プロジェクトストーリー
谷川 直子

関西電力の業務への更なる
関心を呼び起こしてくれた
ビッグプロジェクトへの
参画

託送システム部
低圧託送業務システムグループ

谷川 直子

電力の小売全面自由化に伴い、
低圧託送システムが稼働開始

 2016年4月、1995年以降着々と進められてきた電力システム改革はいよいよ終盤を迎えた。家庭や商店などを対象とする低圧分野においても、新電力による小売電気事業参入が可能となったのだ。これに伴い、電力会社の送配電部門は、送配電事業者として新電力などの小売電気事業者に分け隔てなく送配電網を提供し、その対価として託送料金を受け取ることとなる。託送料金請求に際しては、根拠となる確定使用量や計器取替情報などを通知する必要があり、これらを支援する「低圧託送システム」が、全面自由化と同時に稼働を開始していた。
 谷川直子は、同システムの運用開始から1年ほど後に、維持運用を担うチームに参加。入社10年目に差し掛かった中堅エンジニアとしてシステムの安定稼働の一翼を担い、充実した日々を過ごしていた。一方で、同システムが抱える課題も意識していた。

さらなる電力システム改革に向けて、
解決しておくべき課題への挑戦

谷川 直子
 もともと、同システムが扱うデータは複雑だ。たとえばお客さまの引っ越しなどによる契約異動のコード一つとっても、計器や契約の種類など数多くのデータの組み合わせにより膨大なバリエーションが生まれる。このため、業務の現場ではシステムがカバーしていない想定外のケースが頻出。その度に、関西電力に指示を出してもらい、谷川たちがデータ補正やシステム改修を行うのが常だった。ところが、データの出所となるのが度重なる改修などでプログラム構造が複雑化した旧来の営業システムであり、データの構造も複雑で、補正も改修も簡単ではない。その結果、業務の効率が損なわれるばかりか、システム改修費などもかさむ。
「それでも今はまだ安定稼働を継続できている。困るのは、この先、業務量が増え続けていくことだ…」。新電力がシェアを獲得するにつれて「確定使用量通知業務」(※「確定使用量通知業務」とは関西電力から小売電気事業者に対して託送料金の請求をするにあたり、電気使用量やメーターの取替情報などを帳票に出力して通知すること。)の件数は増えていく。さらに将来的には、電力システム改革の総仕上げともいうべき2020年の送配電部門の分社化に向けて、関西電力の電力小売に対しても「確定使用量通知」が求められるようになる。こうして業務量が劇的に増加していけば、業務運用やシステム運用など、あらゆる面で問題が噴出するのは、谷川の目にも明らかだった。
 2017年4月、課題解決に向け、「低圧託送システムにおける確定使用量通知業務関連機能の改善対応」プロジェクトがスタートした。谷川も、要件定義から基本設計へとフェーズが進んだ同年7月、チームの一員としてアサインされた。 「新たなシステムは、パフォーマンスも向上し、データ構造やプログラム構造も改善されて保守も容易になる。関西電力自らがデータ修正を行える機能を盛り込むことで、費用の削減と作業のスピードアップも図っていただける」。そう考えると意欲がふくらむ。  チームはバッチとオンラインに分かれ、谷川はバッチチームへ。早速メンバーとともに、基本設計から詳細設計・プログラム設計・プログラム作成と、着実に、しかもスピード感を持って、プロジェクトを進行させていった。

巨大で堅牢な営業システムと格闘しつつ
全員で乗り越えた大きな山場

谷川 直子
 試練は予想通り、単体テストのフェーズで待ち構えていた。今回のプロジェクトの目的の一つは、まだシステム化されていない業務要件をシステム化することだ。その膨大な数の要件すべてにテストパターンを用意しなければならない。営業システムのデータ構造を熟知する有識者に協力してもらい、多岐にわたるテストパターンを可能な限り洗い出してテストケースに落とし、テストデータを準備、テストに臨む。動かせないリリース日に向け、単体テスト・結合テストは最短で済ませ、システムテストに重きをおくという方針のもと、緻密なタイムテーブルが作られた。不可能にも思えるスケジュールをこなし切るため、類似したケースをひとまとめにし、流用できる部分は流用して作業量を圧縮するなどの作戦も練られた。谷川は、不可能を可能にするための上司や先輩たちの冷静な判断に、目の覚める思いを味わった。全員参加の作戦会議終了時には「これならやれる。やってやろう!」という強い思いがチームにみなぎった。
 それは同時に、所定のタスクを完了させなければ一日を終われない多忙な日々の始まりでもあった。毎日新たなケースのテストデータを用意し、その夜のバッチ処理をくぐらせる。もちろん、結果の検証も必要だ。何か問題が出て誰かの作業日程に遅れが生じれば、すぐに全員でいかにリカバリーするかを話し合う。チーム一丸で目標を追う気持ちの張りと日々の達成感が、一人ひとりの力を大きく引き出していった。

システムテストからリリースへ
完璧はあり得ない中でたどり着いたゴール

谷川 直子
 全員の頑張りにより、予定通り2月にシステムテストを開始することができた。少数のユーザーに本番と同じ環境で試用してもらい、見つかった不具合を改修していく。最低限必要な時間は確保できたとはいえ、続出する課題に気の抜けない日々が続く。最後の最後まで改修を続け、ついに、バッチシステムが3月下旬、オンラインシステムが4月末にリリースの日を迎えた。
 覚悟していた通り、早速不具合が続出し、谷川もその対応に追われ続けた。それでも、手作業による補正でカバーできる不具合ばかりであったことで、努力は大きく報われた。

新たな目標は、業務にも精通した
提案力あるエンジニア

谷川 直子
 その後、谷川は、再び古巣に戻り、移行を終えた低圧託送システムの維持運用を担当している。複雑巨大なシステムは、今なお改修を果たせない難問をはらみつつも、関西電力の業務効率化に大きく貢献。電力システム改革の裏で、しっかりと電力供給を支え続けている。
 プロジェクトを通じ、一筋縄ではいかないこのシステムに、いつしか愛着を感じるようになった谷川は、システムが担う業務の内容にも深い関心を抱くようになった。かつては言われるままの開発や改修で終わっていた仕事が、気がつくと自分の中で大きく変わっている。「●●をするためのシステムなのだから、ここはこうした方がいい」。そんな思いからの改善提案がごく自然にできるようになり、関西電力との距離もぐっと縮まった。
「関西電力の業務を知ってこそ、共にインフラを支えていく実感も深まる。仕事を通じて社会に貢献したいという入社前からの願いを叶えるためにも、電気事業の業務知識をさらに深めていこう」。
意識の変革は谷川に、新たな目標と仕事の喜びをもたらしている。
関西電力グループ power with heart